スタートアップ

Synspective、小型SAR衛星で地球観測網を構築 累計調達281億円

Deep Space 編集部5分で読了

該当する宇宙スキル標準

NO.37 電源コンポーネント(パワーエレクトロニクス)設計・解析NO.28 熱/熱制御設計・解析NO.33 化学推進(液体燃料)システム設計・解析

ポイント解説

  • 1.小型SAR衛星の量産とAI解析SaaSを組み合わせた、宇宙データ利活用の垂直統合プラットフォームの構築。
  • 2.シリーズCまでの累計調達額281億円は国内最大級であり、Rocket Labとの長期契約による打ち上げ枠の確保が事業継続性の鍵となる。
  • 3.SSS No.01 宇宙工学の社会実装をリードする同社は、技術者とビジネス職が高度に融合した日本発グローバルベンチャーの象徴である。

Synspectiveは小型SAR衛星「StriX」により、全天候型の地球観測網を構築。累計281億円の調達とAI解析ソリューションで、防災やインフラ監視を革新する日本発の宇宙スタートアップ。

## 企業概要

### 創業の背景とミッション

株式会社Synspective(シンスペクティブ)は、2018年2月に設立された日本を代表する宇宙スタートアップである。同社の設立は、内閣府が主導した革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」の成果を社会実装することを目的としている。共同創業者である白坂成功氏は、同プログラムのプログラム・マネージャーとして小型SAR(合成開口レーダ)衛星の開発を指揮した人物である。一方、CEOの新井元行氏はボストン コンサルティング グループでの戦略コンサルティング経験を有し、技術とビジネスの橋渡し役を担う。

同社は「データに基づき、着実に進歩する世界を実現する」をミッションに掲げる。地球上のあらゆる事象を客観的なデータとして捉え、意思決定の質を向上させることを目指している。特に、気候変動による自然災害の激甚化や、インフラの老朽化といった地球規模の課題に対し、衛星データを用いた解決策を提示している。

### 経営陣

経営陣は、宇宙工学の専門家とビジネスプロフェッショナルの混成チームで構成される。CEOの新井氏は、東京大学でエネルギー科学の博士号を取得後、BCGにて多角的な経営戦略に携わった。CFOの安土慶氏は、金融機関での豊富な経験を活かし、宇宙ビジネス特有の巨額な資金調達を主導する。また、取締役の小畑俊暁氏は、衛星開発の現場を統括し、短期間での衛星打ち上げ成功に寄与している。この強力な布陣により、技術開発と事業化を並行して加速させる体制を整えている。

## コア技術とプロダクト

### 技術概要

Synspectiveの核心技術は、100kg級の小型SAR衛星「StriX(ストリクス)」シリーズにある。SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダ)は、衛星自らが電波を照射し、地表からの反射を受信することで画像を生成する。太陽光を必要とする光学衛星とは異なり、夜間や雲に覆われた状態でも観測が可能である。この特性は、雨天時の災害状況把握や、夜間の経済活動モニタリングにおいて決定的な優位性を持つ。

同社の技術的特長は、大型衛星に匹敵する観測性能を維持しながら、衛星の小型化に成功した点にある。ImPACTプログラムで開発された折り畳み式のパラボラアンテナは、打ち上げ時にはコンパクトに収納され、軌道上で展開することで高い利得を確保する。これにより、打ち上げコストを大幅に抑制しつつ、高頻度な観測を可能にするコンステレーションの構築を実現した。

### プロダクトライン

同社は、衛星機体の開発・運用からデータ解析までを一気通貫で提供する。主なプロダクトは以下の通りである。

1. **StriX衛星シリーズ**: 2020年12月に初号機「StriX-α」を打ち上げ、以降「StriX-β」、「StriX-1」、「StriX-3」と順次軌道投入に成功している。2024年現在、複数の衛星が実運用段階にあり、商用観測サービスを提供している。

2. **Land Displacement Monitoring (LDM)**: SARデータの干渉解析(InSAR)技術を用い、地表の変動をミリ単位で計測する。広域のインフラ監視や地盤沈下の検知に利用され、建設・土木業界での導入が進んでいる。

3. **Flood Damage Analysis (FDA)**: 浸水被害を迅速に評価するソリューションである。広範囲の浸水エリアと浸水深をAIで自動抽出し、災害発生時の迅速な救助活動や被害査定を支援する。

## 資金調達と投資家

### 調達ラウンド

Synspectiveは、日本の宇宙スタートアップとして最大規模の資金調達を実施してきた。2019年7月のシリーズAラウンドでは、ジャフコをリード投資家として89.1億円を調達した。これは当時の国内スタートアップにおけるシリーズAとしては異例の規模であった。2022年3月のシリーズBでは119億円、さらに2024年6月のシリーズCでは70億円の調達を発表した。累計調達額は約281億円(約2.3億ドル)に達している。

これらの資金は、衛星の量産体制構築、打ち上げ費用の充当、およびデータ解析プラットフォームの拡充に投入されている。特に、Rocket Lab社との複数機打ち上げ契約など、安定した打ち上げ手段の確保に注力している。

### 主要投資家

投資家層は多岐にわたり、国内主要VCのほか、事業会社、金融機関、海外投資家が名を連ねる。ジャフコ グループやスパークス・グループといった有力VCに加え、損害保険ジャパンや三菱UFJ銀行などの戦略的パートナーが参画している。また、シンガポールのPavilion Capitalのような海外資本の導入は、同社のグローバル展開を裏付けるものとなっている。これらの投資家は、単なる資金提供にとどまらず、保険商品の開発やインフラ輸出といった側面での事業シナジーも期待している。

## 競合環境

### 主要競合

小型SAR衛星市場は、世界的に競争が激化している。主な競合には、フィンランドのICEYE(アイサイ)や米国のCapella Space(カペラスペース)がある。ICEYEは既に30機以上の衛星を打ち上げており、先行者利益を享受している。国内では、九州大学発のQPS研究所が競合となる。QPS研究所も高分解能な小型SAR衛星を展開しており、防衛省等からの受注を獲得している。

### 差別化ポイント

Synspectiveの差別化要因は、データ解析ソリューションの垂直統合にある。競合他社が衛星データの販売(画像提供)を主眼に置くのに対し、同社は顧客の課題解決に直結するSaaS型ソリューションの提供に注力している。例えば、LDMソリューションでは、複雑なレーダ解析を専門知識のないユーザーでも利用可能な形にパッケージ化している。また、日本市場における強固な顧客基盤と、政府プロジェクトとの深い連携も、海外勢に対する参入障壁となっている。

## 日本市場との関連

### 日本拠点・提携

同社は東京に本社を置き、開発・運用の拠点を国内に保持している。国内企業との提携も活発であり、清水建設とは建設現場のモニタリングで、損害保険ジャパンとは防災ソリューションで協力関係にある。これらの提携により、衛星データの社会実装を具体化している。

### JAXA・政府との関係

日本政府との関係は極めて密接である。内閣府のImPACTプログラムが同社の技術的オリジンであり、その後も経済産業省や国土交通省の実証事業に採択されている。2023年には、経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプログラム)において、最大120億円規模のプロジェクトに採択された。これは、日本の宇宙産業における同社の戦略的重要性の高さを示している。また、JAXAとはJ-SPARCプログラムを通じて、技術の高度化と市場開拓の両面で連携している。

掲載元:Deep Space 編集部 (Synspective 分析)

推定読了 5

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