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OneWeb、Eutelsatとの統合でLEO・GEOマルチオービット戦略を加速

Deep Space 編集部4分で読了

該当する宇宙スキル標準

NO.37 電源コンポーネント(パワーエレクトロニクス)設計・解析NO.28 熱/熱制御設計・解析

ポイント解説

  • 1.OneWebは、単なる衛星運用会社から、既存の地上通信網を補完・拡張する「宇宙インフラの卸売業者」へと進化を遂げた。
  • 2.累計64億ドルの調達と破産、そして統合という経緯は、LEOコンステレーションの構築には巨額の資本投下と国家レベルの戦略的支援が不可欠であることを示している。
  • 3.宇宙ビジネスの最前線を知るには、SSS No.15に相当する「通信インフラのグローバル再編」の視点が欠かせない。

OneWebの最新動向、Eutelsatとの統合、ソフトバンクとの提携、LEO衛星コンステレーション技術を解説。宇宙産業アナリストによる詳細データ。

## 企業概要

### 創業の背景とミッション

OneWeb(ワンウェブ)は、2012年にグレッグ・ワイラー氏によって設立された。同氏は、発展途上国や過疎地を含む地球上のあらゆる場所にインターネット接続を提供することをミッションに掲げた。低軌道(LEO)に数百機の小型衛星を配置するコンステレーション構想は、当時の宇宙産業において極めて野心的な試みであった。同社は、デジタル・デバイド(情報格差)の解消を掲げ、ソフトバンクグループやエアバス、クアルコムといったグローバル企業から巨額の資金を調達した。

### 経営陣

創業者のワイラー氏が去った後、同社は2020年の連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を経て、英国政府とインドのバーティ・グローバル(Bharti Global)の傘下に入った。2023年9月には、フランスの通信衛星大手ユナイテッドサット(Eutelsat)との合併を完了した。現在はEutelsat GroupのCEOであるエヴァ・ベルネケ(Eva Berneke)氏が指揮を執り、バーティ・エンタープライズの会長であるスニル・バーティ・ミタル氏がエグゼクティブ・チェアマンを務めている。

## コア技術とプロダクト

### 技術概要

OneWebのコア技術は、高度1,200kmの低軌道に展開される648機の衛星コンステレーションである。各衛星は約150kgと小型ながら、Ku帯のユーザーリンクとKa帯のゲートウェイリンクを備える。静止軌道(GEO)衛星の遅延が約500ミリ秒以上であるのに対し、OneWebのLEOシステムは50ミリ秒以下の低遅延通信を実現する。これにより、クラウドコンピューティングやビデオ会議、リアルタイムのデータ伝送が可能となる。

### プロダクトライン

主なプロダクトは、法人および政府機関向けのブロードバンド接続サービスである。海事(Maritime)、航空(Aviation)、政府(Government)、企業(Enterprise)の4つの主要セグメントに特化している。ユーザー端末(UT)は、固定設置型のほか、車両や船舶に搭載可能な移動体通信対応モデルも展開している。特に、北極圏などの既存インフラが乏しい地域での通信確保において、高い優位性を持つ。

## 資金調達と投資家

### 調達ラウンド

OneWebの資金調達の歴史は波乱に満ちている。2015年のシリーズAで5億ドル、2016年にはソフトバンクから12億ドルを調達した。しかし、2020年3月、追加資金調達の交渉が決裂し、新型コロナウイルスのパンデミックによる市場混乱も重なり、チャプター11を申請した。その後、英国政府とバーティ・グローバルが10億ドルを投じて買収し、再建が始まった。2021年にはEutelsatから5.5億ドル、韓国のハンファシステムズから3億ドルの出資を受け、最終的にEutelsatとの統合に至った。

### 主要投資家

ソフトバンクグループは、累計20億ドル以上を投じた最大の支援者であった。現在はEutelsat Groupの主要株主として名を連ねている。英国政府の出資は、EU離脱後の宇宙戦略における国家安全保障上の重要資産確保という意味合いが強い。また、バーティ・グローバルはインドおよびアフリカ市場への展開における戦略的パートナーである。

## 競合環境

### 主要競合

最大の競合は、イーロン・マスク氏率いるSpaceXの「Starlink(スターリンク)」である。Starlinkは数千機の衛星を自社ロケットで打ち上げる垂直統合モデルで先行している。また、Amazonの「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」や、カナダのTelesatが計画する「Lightspeed」も主要な競合となる。

### 差別化ポイント

OneWebの差別化は「B2B特化」と「マルチオービット」にある。Starlinkが個人消費者向け(B2C)を主力とするのに対し、OneWebは既存の通信事業者との提携を重視する。また、EutelsatのGEO衛星とOneWebのLEO衛星を組み合わせることで、特定の地域への集中負荷をGEOで補完し、低遅延をLEOで担保するハイブリッド運用が可能である。これは、ミッションクリティカルな通信を求める政府や大企業にとって強力な選択肢となる。

## 日本市場との関連

### 日本拠点・提携

日本市場においては、ソフトバンクが独占的な販売パートナーシップを締結している。ソフトバンクは日本国内に複数の地上局(ゲートウェイ)を設置し、OneWebの通信網を自社のモバイルバックホールや法人向けサービスに統合している。また、KDDIもOneWebとの提携を発表しており、日本の通信大手2社がOneWebのプラットフォームを活用する形となっている。

### JAXA・政府との関係

日本政府の「宇宙開発戦略計画」において、LEOコンステレーションは経済安全保障および災害対策の観点から重要視されている。OneWebのサービスは、日本の離島や山間部におけるブロードバンド環境整備の手段として、総務省や自治体のプロジェクトでの活用が期待されている。

掲載元:Deep Space 編集部 (OneWeb (Eutelsat) 分析)

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