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中国民間ロケット初軌道投入の星际荣耀、再使用型開発を加速

Deep Space 編集部4分で読了

該当する宇宙スキル標準

NO.9 プロジェクト統合マネジメントNO.30 流体制御設計・解析

ポイント解説

  • 1.中国民間初の軌道投入達成という実績を背景に、政府系資金を呼び込み再使用型への転換を加速させている。
  • 2.2023年のVTVL試験成功により、着陸精度1.1mというFalcon 9に匹敵する制御技術の片鱗を見せた。
  • 3.SSS No.05。中国の軍民融合政策を体現する企業であり、技術者集団としての性格が極めて強い。

中国民間初の軌道投入を達成した星际荣耀(iSpace)。再使用型ロケット「双曲線2号・3号」の開発状況、液体メタンエンジン技術、累計3億ドル超の資金調達実績を詳解。

## 企業概要

### 創業の背景とミッション

北京星際栄耀空間科技(以下、星际荣耀)は、2016年10月に北京で設立された。創業者の彭小波氏は、中国の国営宇宙開発機関である中国運載火箭技術研究院(CALT)において、長征11号ロケットの開発総指揮を務めた人物である。同氏は、国営主導の宇宙開発で培った高度な技術を民間市場に転移させ、低コストかつ高効率な打ち上げサービスを実現することを目指した。同社のミッションは「宇宙へのアクセスをより容易にし、宇宙資源の利用を加速させること」である。

設立当初から、中国政府が進める「軍民融合」政策の恩恵を受け、北京市経済技術開発区に拠点を構えた。2019年7月25日、同社の固体ロケット「双曲線1号(Hyperbola-1)」が酒泉衛星発射センターから打ち上げられ、民間企業として中国で初めて衛星の軌道投入に成功した。この実績により、同社は中国の商業宇宙産業におけるトップランナーとしての地位を確立した。

### 経営陣

経営陣は、彭小波氏を中心に、CALTや中国航天科工集団(CASIC)などの国営企業出身のエンジニアで構成されている。最高技術責任者(CTO)クラスのメンバーも、長年のロケット設計経験を持つ専門家であり、技術的な信頼性が極めて高い。この「国営出身の精鋭」というチーム構成が、投資家からの高い評価と、迅速な技術実証を可能にしている。

## コア技術とプロダクト

### 技術概要

星际荣耀の技術戦略は、初期の「固体燃料による迅速な実績作り」から、現在の「液体燃料による再使用型の実現」へと移行している。中核となるのは、自社開発の液体メタン・液体酸素エンジン「焦点1号(JD-1)」である。メタン燃料は、従来のケロシンと比較して煤の発生が少なく、エンジンの洗浄が容易であるため、再使用に適している。JD-1は推力調整機能を備え、垂直着陸時の精密な制御を可能にしている。

### プロダクトライン

1. **双曲線1号 (Hyperbola-1)**: 4段式の小型固体ロケット。全長20.8メートル、直径1.4メートル。LEO(低軌道)へのペイロード能力は300kg。2019年の初成功後、数回の失敗を経験したが、2023年4月に再び打ち上げに成功し、運用を継続している。

2. **双曲線2号 (Hyperbola-2)**: 2段式の小型液体ロケット。1段目にJD-1エンジンを搭載し、再使用を前提としている。2023年後半に実施されたVTVL試験機「SQX-2Y」は、このロケットの技術実証用である。

3. **双曲線3号 (Hyperbola-3)**: 現在開発中の大型再使用型ロケット。LEOへのペイロード能力は、使い捨て型で13.4トン、回収型で8.5トンを計画している。2025年の初飛行を目指しており、SpaceXのFalcon 9に近い運用形態を想定している。

## 資金調達と投資家

### 調達ラウンド

星际荣耀は、中国の民間宇宙企業の中で最も多額の資金を調達している一社である。2018年6月のシリーズAでは、Matrix Partners Chinaが主導し、約9,500万ドルを調達した。さらに2020年8月には、北京市政府系のファンドであるBeijing Financial Street Capital Investmentが主導するシリーズBで、約1億7,300万ドル(11.925億人民元)を調達した。このラウンドには、Tencent(騰訊)や中信証券(CITIC Securities)などの大手企業・金融機関が名を連ねている。

### 主要投資家

同社の投資家層は、Matrix PartnersやSequoia ChinaといったトップクラスのVCから、政府系ファンド、証券会社系CVCまで多岐にわたる。これは、同社の技術力が国家戦略に合致しており、かつ商業的成功の可能性が高いと判断されている証左である。特に北京市政府の強力なバックアップは、試験場の確保や許認可の取得において大きな優位性となっている。

## 競合環境

### 主要競合

中国国内では、LandSpace(藍箭航天)、Galactic Energy(星河動力)、Deep Blue Aerospace(深藍航天)が主要な競合となる。LandSpaceは2023年に世界初の液体メタンロケット「朱雀2号」の軌道投入に成功しており、星际荣耀にとって最大のライバルである。Galactic Energyは固体ロケットの打ち上げ成功回数で星际荣耀を上回っている。

### 差別化ポイント

星际荣耀の差別化ポイントは、垂直離着陸(VTVL)技術の精度にある。2023年12月の試験では、着陸精度1.1メートル、着陸速度秒速1.5メートルという極めて高い制御能力を実証した。また、固体と液体の両方の運用経験を持つ点も、顧客の多様なニーズに応える上での強みとなっている。

## 日本市場との関連

### 日本拠点・提携

現在、日本国内に拠点はなく、日本企業との直接的な提携も確認されていない。

### JAXA・政府との関係

JAXAや日本政府との公的な関係はない。中国の宇宙企業は国家安全保障上の制約から、日本を含む西側諸国の政府機関との直接連携は制限される傾向にある。しかし、商業衛星の打ち上げ市場においては、将来的に日本の民間衛星オペレーターが顧客となる可能性は排除されない。

掲載元:Deep Space 編集部 (iSpace China (星际荣耀) 分析)

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