研究

東大、超小型衛星で宇宙デブリ除去を実証

東京大学(中須賀・船瀬研究室)

ポイント解説

  • 1.本成果は、宇宙利用の持続可能性を脅かすデブリ問題に対し、日本の技術が実用的な解決策を提示するものである。
  • 2.2023年末時点で約3万個のデブリが観測される中、東京大学の技術は従来のデブリ除去コストを大幅に削減すると見られる。
  • 3.SSS No.601「宇宙システムの運用技術」は、軌道上での実証と運用に必要なスキルであり、本プロジェクトの成功に不可欠であった。

東京大学中須賀・船瀬研究室が超小型衛星群による宇宙デブリ除去技術の軌道上実証に成功。低コストで高効率なデブリ除去への道を開き、持続可能な宇宙利用に貢献する日本の先進技術を解説。

東京大学中須賀・船瀬研究室は、2026年4月27日、超小型衛星群を用いた宇宙デブリ除去技術の軌道上実証に成功したと発表した。本技術は、複雑化する宇宙デブリ(Space Debris: 宇宙ごみ)問題に対し、低コストかつ高効率な除去ソリューションを提供する。持続可能な宇宙利用環境の確保へ、国際貢献が期待される画期的な成果である。

軌道上実証の成功と革新的な手法

実証は「ADRAS-M (Active Debris Removal by Autonomous Small-Satellite Swarm Mission)」と名付けられたミッションにより実施された。複数機の超小型衛星(CubeSatやマイクロサットクラス)が協調して動作する。これらの衛星は、軌道上に存在する模擬デブリ(廃棄された人工衛星やロケットの残骸を模したターゲット)への接近・捕獲・軌道離脱を実証したと見られる。

研究室は、模擬デブリを安全に捕捉し、制御された軌道で大気圏へ再突入させる一連のプロセスを確立した。これは、これまで技術的・コスト的に困難とされてきた課題への解答を示すものだ。特に複数機の衛星が自律的に連携する群飛行技術(Satellite Swarm Technology)が鍵となる。群飛行技術は、単一の大型衛星では難しい柔軟性と冗長性を提供する。

深刻化する宇宙デブリ問題

宇宙デブリ問題は、現代の宇宙利用における喫緊の課題である。欧州宇宙機関(ESA)の報告によると、2023年末時点で地球軌道上には直径10cm以上のデブリが約3万個存在する。これら全てが追跡可能なデブリである。また、直径1cm〜10cmのデブリは90万個、直径1mm〜1cmのデブリは1億3000万個を超えると推定されている。

これらのデブリは高速で地球を周回しており、現役の人工衛星や宇宙船と衝突する危険性を常に抱えている。時速数万kmで衝突すれば、深刻な損傷や機能停止を引き起こす可能性がある。2009年には、運用中の通信衛星イリジウム33号と非運用状態のロシアの軍事衛星コスモス2251号が衝突した。この事故により2000個近い新たなデブリが生成された。

宇宙デブリの増加は、将来の宇宙活動を制約する「ケスラーシンドローム(Kessler Syndrome)」の懸念を高めている。ケスラーシンドロームとは、デブリ同士の連鎖的な衝突により、特定軌道の利用が不可能になる状況を指す。この問題を解決するため、能動的なデブリ除去(Active Debris Removal: ADR)技術の開発が世界中で加速している。

超小型衛星群によるソリューションの優位性

中須賀・船瀬研究室が開発した超小型衛星群による除去技術は、いくつかの点で画期的だ。第一に、開発・打ち上げコストの大幅な削減が期待できる。従来の大型デブリ除去衛星と比較して、超小型衛星は部品の標準化や量産効果が期待できる。これは、より多くのデブリを効率的に除去するための重要な要素となる。

第二に、複数の小型衛星が連携することで、単一の大型衛星よりも高い柔軟性と効率性が実現される。例えば、複雑な形状のデブリへのアプローチや、複数のデブリを同時に監視・除去する「マルチターゲット除去」が可能になる。また、一部の衛星が故障してもミッション全体への影響を限定できる。

第三に、この技術は既存の小型衛星技術を応用している。世界的に普及が進むCubeSat(キューブサット: 一辺が約10cmの立方体を基本単位とする超小型衛星)の技術的蓄積を活用できるためだ。研究室が長年培ってきた超小型衛星開発の知見が存分に活かされている。

日本市場・日本企業への示唆

今回の成功は、日本の宇宙産業に大きなビジネスチャンスをもたらす可能性がある。世界中でデブリ問題への意識が高まる中、能動的デブリ除去サービス(ADRサービス)の需要は今後飛躍的に拡大すると見られる。日本のベンチャー企業や中堅企業は、超小型衛星の量産技術や精密な軌道制御技術を活かせるだろう。

例えば、衛星の製造・運用を手がける企業は、デブリ除去ミッション専用の衛星バス(Satellite Bus: 衛星の基本的な構造と共通機能)を開発できる。また、AI(人工知能)を活用した自律的な衛星群制御システムや、デブリの精密追跡・識別技術も重要性を増す。これらの分野で日本の高い技術力が国際競争力を発揮する機会である。

さらに、保険会社や衛星通信事業者もこの動向に注目すべきだ。デブリ除去技術の実用化は、軌道上資産の安全性向上に直結する。これにより、宇宙保険料の見直しや、新たな宇宙ビジネスモデルの創出につながる可能性も秘めている。

今後の展望

中須賀・船瀬研究室は、今回の軌道上実証の成功を受け、数年内の実用化を目指す方針だと表明した。今後は、より大型のデブリに対する除去技術の実証や、商用デブリ除去サービスへの展開が期待される。宇宙空間の持続可能性を確保するため、日本の技術が国際社会で主導的な役割を果たすことになるだろう。国際的な協力体制の構築も喫緊の課題である。

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**出典**: 東京大学(中須賀・船瀬研究室) — 2026-04-26

**関連するSSSスキル**: SSS No.601「宇宙システムの運用技術」は、軌道上での超小型衛星群の協調的な運用とデブリ除去プロセスを成功させるために不可欠なスキルである。SSS No.501「衛星システム設計・開発技術」は、超小型衛星群の設計、開発、およびデブリ捕獲ペイロードの統合に直接関連する。SSS No.604「宇宙環境影響評価・対策技術」は、宇宙デブリ問題の根本的な理解と、その解決策としての除去技術開発の基盤となる知識である。

掲載元:東京大学(中須賀・船瀬研究室) · 参照リンク

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