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ASTS、2026年内に衛星60基体制。既存スマホで高速通信実現へ。

Deep Space 編集部4分で読了

該当する宇宙スキル標準

NO.37 電源コンポーネント(パワーエレクトロニクス)設計・解析NO.28 熱/熱制御設計・解析

ポイント解説

  • 1.地上基地局が不要になり、既存スマホがどこでも繋がる「宇宙モバイル網」が完成する。
  • 2.楽天モバイルは2026年に国内全域カバーを目指し、KDDIとStarlinkの連合に対抗する。
  • 3.SSS No.05(無線通信エンジニア)。地上通信キャリアの技術者が衛星通信設計へ転じる事例が急増。

ASTSが2026年末までに最大60基の衛星を展開し、既存スマホでの宇宙ブロードバンドを実現。楽天モバイルを含む世界の大手キャリアと提携し、通信空白地帯を解消する。日本国内でも2026年に商用化へ。

米宇宙スタートアップのASTスペースモバイル(ASTS)は、2026年末までに最大60基の「ブルーバード(BlueBird)」衛星を打ち上げる計画を明らかにした。同社は既存のスマートフォンで直接衛星通信を行うD2D(ダイレクト・トゥ・デバイス)技術の商用化を目指す。米ベライゾンや米AT&T、楽天モバイルなど世界の通信大手と提携し、地上基地局がカバーできない空白地帯を解消する。この展開により、特別な機器を必要としない宇宙ブロードバンド通信が、世界規模で現実味を帯びてきた。

通信衛星「ブルーバード」の量産加速

ASTSは、低軌道(LEO)からスマートフォンへの直接通信を可能にする大型衛星の開発を加速させている。Telecoms.comによると、同社は2026年末までに45基から60基の「ブルーバード」衛星を軌道上に投入する。2024年9月には、最初の商業用衛星である「ブロック1」を5基打ち上げる予定だ。続く「ブロック2」では、通信容量をブロック1と比較して約10倍に拡大した最新仕様の衛星を投入する。

衛星の大型化により、地上の基地局と同等の通信品質を宇宙から提供する狙いだ。ブルーバード衛星のアンテナ面積は約64平方メートルに及び、商用通信衛星としては過去最大級となる。同社はテキサス州の自社工場で、月産4基以上の製造ペースを確立することを目指している。この量産体制の構築が、2026年の商用化目標を達成するための鍵を握ることになる。

既存端末で5G体験、地上網と宇宙の融合

同社の技術的な最大の特徴は、既存のスマートフォンをそのまま利用できる点にある。競合他社が提供するメッセージ送受信に限定されたサービスとは異なり、ASTSは5G(第5世代移動通信システム)によるブロードバンド通信を目指す。これにより、山間部や海上など地上網が届かない場所でも、動画視聴や高速データ通信が可能になる。2024年5月には米ベライゾンから1億ドル(約150億円)の資金調達と提携を発表した。

ベライゾンはAT&Tと共に、850メガヘルツ(MHz)帯の周波数をASTSに提供することを決定した。米国を代表する二大キャリアが同一の衛星プラットフォームに相乗りするのは異例の事態である。ASTSの特許ポートフォリオは、出願中を含め2800件を超えている。この膨大な知的財産が、衛星と既存端末を直接つなぐ複雑な干渉制御技術を支えている。地上網を補完する「空の基地局」としての役割が、通信業界の構造を根本から変えようとしている。

楽天モバイルが狙う「国内カバー率100%」の勝機

日本市場においても、ASTSの動向は極めて重要な意味を持つ。筆頭株主の一つである楽天モバイルは、2026年内に日本国内での商用サービス開始を目指している。同社の三木谷浩史会長は、衛星通信の活用により「国内居住地カバー率100%」を実現する方針を掲げた。これは、従来の地上基地局のみでは経済的に困難だった、過疎地や離島へのサービス提供を可能にする画期的な一手となる。

競合するKDDIは米スペースXの「スターリンク(Starlink)」と提携し、2024年内のD2Dサービス開始を予定している。しかし、スターリンクの初期サービスはテキスト送信に限定される見通しだ。対する楽天モバイルとASTSの連合は、最初から音声通話やデータ通信を含むフルスペックのサービスを狙う。日本のキャリア間競争は、地上から高度数百キロメートルの宇宙空間へと戦場を移している。

巨大アンテナ展開と資金繰りが成長の焦点

今後の課題は、巨大な衛星アンテナを軌道上で正確に展開できるかという技術的リスクだ。ブルーバード衛星のアンテナはテニスコート半分ほどの面積があり、展開の失敗はミッションの致命傷となる。また、2026年までの継続的な打ち上げには莫大な資金が必要だ。同社はベライゾン等からの出資に加え、さらなる資本調達を検討していると報じられている。米連邦通信委員会(FCC)による規制当局の認可プロセスも不透明な要素として残る。

それでも、宇宙から直接スマホをつなぐ市場の潜在力は計り知れない。モルガン・スタンレーの試算によれば、衛星直接通信の市場規模は2040年までに年間1兆ドルに達する可能性がある。ASTSが掲げる「デジタルデバイド(情報格差)の解消」というビジョンは、社会インフラとしての通信のあり方を再定義するだろう。2026年の本格稼働に向け、技術実証から事業化への最終段階がいよいよ始まる。

出典

- Telecoms.com: AST SpaceMobile pledges 2026 service launch

掲載元:Telecoms.com · 参照リンク

推定読了 4

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