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NEC、国内初の光通信衛星コンステ実証機の設計完了 27年度打上げ

Deep Space 編集部3分で読了

該当する宇宙スキル標準

NO.37 電源コンポーネント(パワーエレクトロニクス)設計・解析NO.28 熱/熱制御設計・解析

ポイント解説

  • 1.衛星通信が「電波」から「光」へ移行し、宇宙が地上の光ファイバー網の延長線上に組み込まれる。
  • 2.NECはAMDの先端SoCを採用し、宇宙空間でのエッジAI処理を実現することで、スターリンクとの技術的差別化を図る。
  • 3.SSS No.04(組込みソフトウェア・FPGA開発)。通信機器メーカーのハードウェアエンジニアが、衛星用SoCの論理設計へ転身する好機となる。

NECが日本初の光通信衛星コンステレーション実証機のペイロード設計を完了。Q/VバンドやAMD Versalを採用し、従来比10倍の高速通信を目指す。2027年度に打上げ、宇宙の大容量通信基盤を構築する。

NECは、2027年度に打上げを予定する光通信衛星コンステレーション(小型衛星による通信網)実証機の設計を完了した。本機は、日本初となる光通信を用いた衛星網の技術実証を目的とする。宇宙空間での大容量通信基盤の構築を急ぐ。通信の高速化により、地上網と同等の通信環境を宇宙で実現することを目指す。

光通信とQ/Vバンドで大容量化を実現

実証機には、NECが長年培った光通信技術が搭載される。従来の電波通信と比較し、光通信は10倍以上の高速伝送が可能となる(NEC試算)。従来のKaバンド(30GHz帯)に代わり、より高周波なQ/Vバンド(40GHz/50GHz帯)のミリ波(波長の短い電波)を採用する。これにより、地上局と衛星間の通信帯域を大幅に拡大する。宇宙空間でのデータ処理には、米AMDの「Versal(適応型コンピューティング・プラットフォーム)」を活用する。このプロセッサは、放射線耐性と高い演算性能を両立している。衛星バス(衛星の基本基盤)には、米アペックス社の「Aries(中型衛星プラットフォーム)」を採用する。設計の標準化により、開発期間の短縮とコスト低減を図る。生成AI(人工知能による自動生成)の普及に伴うデータ通信需要の急増に対応する方針だ。

スターリンク追撃へ、低遅延通信の市場環境

背景には、低軌道衛星による通信需要の急速な拡大がある。米スペースXの「スターリンク」は、既に6000機以上の衛星を運用している。同社はレーザー間通信を実用化しており、世界の通信インフラを塗り替えつつある。NECは、日本独自の光通信コンステレーションを構築することで、通信の自律性を確保する。低軌道(高度2000キロメートル以下の軌道)での通信は、静止衛星(高度3万6000キロメートル)と比較して遅延が少ない。数ミリ秒単位の低遅延通信は、遠隔医療や自動運転の制御において不可欠な要素となる。モルガン・スタンレーの予測によれば、世界の宇宙産業市場は2040年までに1兆ドル(約150兆円)に達する。そのうち、衛星通信サービスが約半分を占める見通しである。NECは、この巨大市場において、地上網と宇宙網を統合する「Non-Terrestrial Network(非地上系ネットワーク)」の主導権を狙う。

日本企業への波及とサプライチェーンの強化

本プロジェクトの進展は、日本国内の宇宙スタートアップに多大な恩恵をもたらす。NECが通信基盤を構築することで、民間企業が独自の衛星を相乗りさせる機会が増える。国内の電子部品メーカー各社にとっても、宇宙品質のミリ波部品の供給実績を作る好機となる。例えば、光ファイバー技術を持つ国内企業が、宇宙用レーザー光源の供給で参画する可能性がある。宇宙戦略基金(政府が1兆円規模で設置した支援枠)の活用も視野に入る。国内で完結するサプライチェーン(供給網)の構築は、経済安全保障の観点からも重要である。また、地方自治体や離島での高速通信環境の改善も期待される。災害時の通信手段確保として、光衛星コンステレーションは有力な解決策となる。日本の宇宙産業が「研究開発」から「事業化」へ移行する重要な転換点と言える。

熱設計とデブリ対策が今後の焦点

実証機の打上げに向けた課題は、宇宙空間での熱管理とデブリ(宇宙ゴミ)対策である。光通信機器は高出力であるため、排熱設計が極めて複雑になる。NECは、自社の熱解析技術を駆使してこの問題を解決した。2027年度の打上げ後、約1年間にわたり軌道上での性能実証を行う。その後、数百機規模のコンステレーション構築に向けた量産フェーズに移行する計画だ。スペースデブリの増加に伴う衝突リスクへの対応も欠かせない。実証機には、運用終了後に自動で大気圏へ突入させる「デオリビット(軌道離脱)」機能が搭載される。国際的なスペース・トラフィック・マネジメント(宇宙交通管理)のルール遵守が求められる。NECは、衛星の運用自動化技術も開発中である。生成AIを用いた自律運用により、多数の衛星を効率的に管理する仕組みを整える。2030年代の本格運用に向け、技術の磨き上げを継続する。

出典

- NEC Press Release: NEC completes payload design for Japan's first optical communication satellite constellation demonstrator

掲載元:NEC(公式) · 参照リンク

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