スタートアップ
アストロスケール、26年に世界初の商業デブリ除去を開始する。OneWeb衛星を捕獲。
該当する宇宙スキル標準
ポイント解説
- 1.宇宙デブリ除去が「実証実験」から、数千機の衛星を運用する通信インフラ維持のための「必須ビジネス」へと昇華する。
- 2.英政府が約23億円を投じ、600機超の衛星を抱えるOneWebと連携。民間ロケットを活用した「安価な廃棄サービス」の標準化を狙う。
- 3.SSS No.02(システムエンジニアリング)。自動車や家電の量産設計・保守の知見は、今後量産される「サービス衛星」の運用設計に直結する。
アストロスケールのELSA-Mミッションが2026年開始。OneWeb衛星を対象とした世界初の商業デブリ除去。英政府とESAが支援。日本の宇宙スタートアップが牽引する軌道上サービスの最前線。
宇宙スタートアップのアストロスケール(東京・墨田)の英国法人は、2026年にデブリ除去を開始する。
同社は、軌道上の故障機を回収する実証機「ELSA-M(エルサ・エム)」の打ち上げ契約を締結した。
打ち上げには、独イザー・エアロスペースの小型ロケット「スペクトラム」を使用する計画である。
本ミッションは、運用を終了した商業衛星を軌道上から除去する世界初の試みとして注目される。
対象となるのは、欧ユートサット・ワンウェブが運用する低軌道(LEO)の通信衛星である。
本事業は、英国宇宙庁(UKSA)および欧州宇宙機関(ESA)の支援を受けて実施される。
複数衛星の連続除去を目指すELSA-Mの技術
ELSA-Mは、1回のミッションで複数のデブリを除去する能力を持つ軌道上サービス実証機である。
2021年に実施した「ELSA-d」では単一の模擬デブリを対象としたが、今回は実稼働衛星を捕獲する。
同機は、磁気ドッキングプレートを備えた衛星を安全に捕獲し、大気圏へ再突入させて処分する。
ワンウェブの衛星は、製造段階からこのドッキングプレートを標準装備しているのが特徴である。
これにより、従来は困難だった「協力的なデブリ」の効率的な回収が可能となる。
イザー社のスペクトラムは、ペイロード(積載物)投入精度が高いと期待される新興ロケットである。
打ち上げ地は、ノルウェーのアンドーヤ宇宙センターを予定しており、極軌道への投入を目指す。
英政府が主導する宇宙環境保護の経済圏
本プロジェクトには、UKSAがESAのARTESプログラムを通じて資金を拠出している。
拠出額は約1170万ポンド(約23億円)に上り、これは欧州のデブリ除去予算として最大級である。
宇宙デブリの急増は、ケスラー・シンドローム(衝突の連鎖による軌道利用不能)を招く恐れがある。
現在、LEOには約1万機以上の運用中衛星が存在し、今後10年でさらに数万機が増える見通しである。
ワンウェブだけでも600機超の衛星群を運用しており、故障機の放置は事業継続のリスクとなる。
デブリ除去はもはや「公共事業」ではなく、衛星運営者の「義務」へと変化しつつある。
アストロスケールは、この需要を先取りし、軌道上サービス(OOS)市場の独占を狙う。
日本市場への波及と国内企業への示唆
日本政府も2023年策定の「宇宙基本計画」において、宇宙環境の持続可能性確保を掲げている。
アストロスケールの成功は、日本のデブリ除去技術が世界標準となる可能性を示唆している。
国内ではスカパーJSATなどが軌道上サービスへの関心を強めており、技術協力の機会が増大する。
また、三菱電機などの衛星メーカーにとっても、捕獲用プレートの標準化は新たな商機となる。
日本企業が強みを持つロボティクス技術は、デブリ捕獲アームの開発で不可欠な要素である。
グローバルなルール形成において、日本発の技術がデファクトスタンダード(事実上の標準)となる好機だ。
一方で、国内の法整備は欧米に比して遅れており、早急なガイドラインの策定が求められる。
今後の展望と解決すべき課題
ELSA-Mの2026年打ち上げは、軌道上サービスの実用化に向けた重要なマイルストーンとなる。
しかし、商業化には除去コストのさらなる低減が不可欠な課題として残っている。
現在は政府系資金が主導しているが、今後は民間保険や衛星事業者の自費負担が鍵を握る。
また、他国衛星を捕獲する際の法的責任や、安全保障上の透明性確保も議論が必要である。
アストロスケールは、サービス価格の適正化を図り、2030年までの定常運用を目指す。
宇宙の持続可能性を守るビジネスは、未踏の巨大市場として今後も成長を続ける見込みである。
出典
- Space.com: Astroscale signs launch deal for ELSA-M debris removal mission
掲載元:Space.com · 参照リンク
推定読了 3 分
この記事を読んだ方へ
記事を読んだ手がかりを、自分のスキルに接続する
宇宙スキル標準に沿ったAI診断で、経歴の位置づけを可視化。