スタートアップ
米ロケットラボ、中型機初飛行を26年末に延期、タンク破裂が影響、小型機は過去最多
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ポイント解説
- 1.中型ロケット市場の「スペースX一強」を崩す挑戦者が、炭素繊維技術の壁に直面し、供給不足の解消がさらに1年先送りされた。
- 2.ニュートロンの13t運搬能力は日本のH3や米ファルコン9の隙間を埋める戦略的機体だが、2024年のタンク試験失敗により2025年デビューの勝機を逸した。
- 3.SSS No.12(システム設計・検証)が不可欠であり、自動車や航空機業界の「故障モード影響解析」等の品質管理スキルが宇宙スタートアップで切望されている。
米ロケットラボの中型ロケット「Neutron」が2026年末に延期。地上試験の不具合が影響。主力機「Electron」は好調。日本企業の衛星打ち上げへの影響と今後の展望を解説。である調。
米宇宙スタートアップのロケットラボ(Rocket Lab)は、開発中の中型ロケット「ニュートロン(Neutron:ロケットラボが開発中の大型ロケット)」の初飛行を2026年第4四半期以降に延期する。ピーター・ベック最高経営責任者(CEO:企業の事業を統括する最高責任者)が投資家向け説明会で明らかにした。当初は2025年内の打ち上げを計画していたが、地上試験でのタンク破裂が工程に影響した。主力の小型ロケット「エレクトロン(Electron:ロケットラボが主力とする小型ロケット)」は2024年の打上数が過去最多を更新した。同社は小型機で収益を稼ぎつつ、中型機の開発を加速する二段構えの戦略を維持する構えだ。
タンク破裂が開発工程を圧迫、13トン級の市場投入に遅れ
ニュートロンの延期の直接的な要因は、炭素繊維複合材(カーボンコンポジット:軽くて丈夫な素材で、航空宇宙分野で広く使われる複合材料)を用いた上段タンク(ロケットの燃料や酸化剤を貯蔵する、機体上部の容器)の試験失敗である。スペースニュース(SpaceNews)の報道によると、2024年初頭に実施した圧力試験中にタンクが破裂した。この事故を受け、同社は構造設計の微調整と検証作業の追加を決定した。ニュートロンは低軌道(LEO:地表から高度200kmから2,000kmの範囲にある地球周回軌道)に最大13トンの打ち上げ能力を持つ。これは同社の小型機エレクトロン(約300キログラム)の40倍以上の能力に相当する。再使用を前提とした設計で、スペースX(SpaceX:イーロン・マスク氏が創業したアメリカの宇宙輸送サービス企業)の「ファルコン9(SpaceXが運用する再使用可能な中型ロケット)」が独占する中型市場の奪取を狙う。独自開発の「アルキメデス(Archimedes)エンジン(ニュートロンロケットに搭載される推進用エンジン)」は、燃焼試験で良好な結果を得ているという。ベックCEOは、エンジンの進捗は順調だが、機体全体の統合には時間が必要だと説明した。米バージニア州のワロップス島飛行施設(Wallops Island:アメリカ・バージニア州にあるNASAのロケット発射施設)での射場建設は継続中である。
エレクトロンは年間12回の記録更新、黒字化への足場固める
中型機が足踏みする一方で、主力の小型機エレクトロンは市場での存在感を高めている。2024年の打ち上げ回数は12回に達し、2023年の10回から2割増加して過去最多を記録した。同機は民間企業や政府機関の小型衛星を迅速に打ち上げる「オンデマンド輸送(顧客の要求に応じて、必要な時に必要な物を輸送するサービス)」で強みを持つ。1回あたりの打ち上げ費用は約750万ドル(約11億円)とされる。競合他社が小型機開発で苦戦する中、安定した運用実績を積み上げている。同社は2024年第3四半期の売上高が前年同期比で55%増加したと発表した。ニュートロンへの多額の投資が続く中でも、小型機の収益貢献により財務基盤を支える。再使用型の初段機体(ロケットの打ち上げ時に最初に点火し、初期の推力を生み出す部分)の回収実験も進めており、さらなるコスト削減を追求している。中型機が稼働するまでの間、エレクトロンがキャッシュフローを維持する役割を担う。
日本企業の衛星打上計画に波及、中型機の選択肢不足が鮮明に
ニュートロンの投入遅延は、日本の宇宙産業にも無視できない影響を及ぼす。現在、日本の衛星ベンチャーは打ち上げ手段の確保に苦慮している。三菱重工業(MHI)が運用する「H3ロケット(三菱重工業が開発・運用する日本の主力大型ロケット)」は大型機であり、中型衛星の単独打ち上げにはコスト面で課題が残る。ニュートロンは、ファルコン9に代わる有力な選択肢として期待されていた。今回の延期により、日本の衛星事業者は2026年まで米スペースXへの依存を強める可能性が高い。政府が進める「宇宙戦略基金(日本の宇宙産業の育成と競争力強化を目的とした政府系基金)」によるスタートアップ支援でも、打ち上げ手段の確保は重要課題である。また、ロケットラボの事例は、炭素繊維を用いた大型構造物の開発難易度を改めて示した。日本の素材メーカーや機体メーカーにとって、試験プロセスの高度化が競争力の源泉となることを示唆している。
今後の展望、2026年の商用運用開始に向けた最終試練
ロケットラボは今後、アルキメデスエンジンの長秒時燃焼試験と機体構造の最終検証に注力する。2025年にはワロップス島の専用射場が完成する見通しだ。同社はニュートロンを使い、自社の衛星コンステレーション(多数の人工衛星を連携させて、広範囲なサービスを提供するシステム)構築も視野に入れている。中型ロケット市場では、米ブルーオリジン(Blue Origin:Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が設立したアメリカの宇宙企業)の「ニューグレン(Blue Originが開発中の中型ロケット)」なども競合となる。ベックCEOは「2026年末の打ち上げは保守的な目標だ」と述べ、信頼性を最優先する姿勢を強調した。宇宙輸送の需要は世界的に高まっており、中型機の早期実用化が宇宙ビジネスの拡大を左右する。開発の遅れを最小限に抑えつつ、エレクトロンの運用で得た知見をいかに中型機へ転移できるかが焦点となる。
出典
掲載元:SpaceNews · 参照リンク
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