スタートアップ
インターステラテクノロジズ——低価格ロケットで宇宙輸送を民主化する
該当する宇宙スキル標準
ポイント解説
- 1.垂直統合開発と民生品活用による、打上げコストの劇的な低減と高頻度化の追求である。
- 2.2023年にSBIインベストメント等からシリーズDで資金調達し、累計調達額は約170億円に達し、国内民間ロケット開発の筆頭格である。
- 3.SSS No.12。自動車・重工業からのエンジニア転身が中心であり、特に推進系や構造設計において異業種の量産技術を宇宙転用する経路が確立されている。
インターステラテクノロジズ(IST)の最新分析。小型ロケットZEROの技術的特徴、JAXA SBIR採択を含む資金調達状況、競合比較、日本市場への影響を詳述。

企業概要
インターステラテクノロジズ株式会社(Interstellar Technologies Inc.、以下IST)は、北海道広尾郡大樹町に本社を置く、日本を代表する民間ロケット開発企業である。2013年に設立された同社は、「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というビジョンのもと、低価格で高頻度な宇宙輸送サービスの実現を目指している。創業者は実業家の堀江貴文氏であり、現在は代表取締役社長の稲川貴大氏が経営と技術開発を牽引する。同社は、観測ロケット「MOMO」の開発・打上げを通じて、国内民間企業として初めて高度100km以上の宇宙空間に到達した実績を持つ。現在は、小型衛星を軌道投入するためのロケット「ZERO」の開発に注力しており、垂直統合型の開発体制と自動車産業等の既存技術の活用により、圧倒的な低コスト化を図っている。2023年には文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」に採択され、国家プロジェクトとしての側面も強めている。
コア技術とプロダクト
ISTの技術的特徴は、徹底した内製化と既存産業技術の転用によるコストダウンである。主力プロダクトである「ZERO」は、全長約32m、直径2.3mの2段式ロケットであり、高度500kmの太陽同期軌道(SSO)に最大800kgの打上げ能力を持つ。推進剤には、環境負荷が低く、冷却性能に優れた液体バイオメタン(LBM)と液体酸素(LOX)の組み合わせを採用している。エンジン「COSMOS」には、高性能な「ガスジェネレータサイクル」と、推力制御が容易な「ピントル型インジェクタ」を搭載している。また、ロケットの心臓部であるターボポンプの開発においては、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究成果を活用し、3Dプリンティング技術を用いた一体成型により部品点数を大幅に削減している。さらに、アビオニクス(電子機器)には民生品を積極的に採用し、自社開発のソフトウェアで制御することで、従来の宇宙専用部品に依存しない低コスト構造を実現している。
資金調達と投資家
ISTは、これまでに複数の資金調達ラウンドを経て、累計で約170億円(約115,000,000 USD)規模の資金を確保している。2023年9月にはシリーズDラウンドを完了し、SBIインベストメントをリード投資家として、ソニーグループ、セガサミーホールディングス、INPEX、三井住友海上火災保険などの国内大手企業やVCから出資を受けた。また、同年には文部科学省のSBIRフェーズ3において、宇宙輸送分野での採択を受け、最大20億円の交付が決定している。これらの資金は、主に「ZERO」の開発費、エンジン燃焼試験設備の拡充、および北海道大樹町にある「北海道スペースポート(HOSPO)」内の専用打上げ射点「LC-1」の建設に充てられている。地方自治体である大樹町との強固な連携も特徴であり、ふるさと納税制度を活用した資金調達も継続的に実施している。
競合環境
世界の小型ロケット市場では、米国のRocket Lab(ロケット・ラボ)が「Electron」により先行しており、既に商用運用を確立している。また、ドイツのIsar Aerospace(イザール・エアロスペース)やRocket Factory Augsburg(RFA)などの欧州勢も、ISTと同様のペイロードクラスでの開発を加速させている。これら競合に対し、ISTは「アジア市場への近接性」と「日本国内のサプライチェーン活用」を強みとする。特に、日本国内には衛星コンステレーション(多数の衛星によるネットワーク)を計画する企業が増加しており、国内で打上げを完結できるニーズは高い。ISTは、1機あたりの打上げ費用を8億円以下に抑えることを目標としており、これにより国際的な価格競争力を確保する戦略である。
日本市場との関連
ISTの事業は、日本の宇宙基本計画における「宇宙輸送能力の自立性確保」に直結している。現在、日本の衛星事業者は海外ロケットへの依存度が高いが、ISTが「ZERO」の実用化に成功すれば、国内での迅速な打上げが可能となる。また、北海道大樹町を中心とした「宇宙版シリコンバレー」の形成に寄与しており、地元企業の参画や雇用創出など、地域経済への波及効果も大きい。日本政府による「宇宙戦略基金」の創設など、民間宇宙開発への支援が加速する中、ISTは日本の宇宙産業エコシステムにおける中核企業としての役割を期待されている。今後は、ZEROの大型化や再使用型ロケットの研究開発も視野に入れており、日本の宇宙輸送技術の高度化を牽引する存在である。
出典
- インターステラテクノロジズ 公式サイト(https://www.istellartech.com/)
- 文部科学省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」採択結果
- 経済産業省「宇宙産業ビジョン2030」
- PR TIMES インターステラテクノロジズ プレスリリース一覧
掲載元:インターステラテクノロジズ(インターステラテクノロジズ 分析) · 参照リンク
推定読了 4 分
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