スタートアップ
Relativity Space——3Dプリンティングによるロケット製造の革新である
該当する宇宙スキル標準
ポイント解説
- 1.ソフトウェア制御の3Dプリンタ群が、ロケットを「印刷」可能なデジタル資産へと変貌させる。
- 2.2021年のシリーズEでFidelity等から6.5億ドルを調達し、評価額42億ドルのユニコーン企業としてTerran Rの開発を加速させている。
- 3.SSS No.08。トヨタや日産等の自動車メーカー出身の生産技術者が、Stargateを用いた自動製造プロセスの構築において即戦力として重用される経路が確立されている。
Relativity Spaceの3Dプリンティング技術「Stargate」と完全再使用型ロケット「Terran R」を解説。資金調達実績や競合比較、日本市場への影響を網羅。

企業概要
Relativity Space(リラティビティ・スペース)は、2015年にTim Ellis氏(CEO、元Blue Origin)とJordan Noone氏(元SpaceX)によって設立された、米国カリフォルニア州ロングビーチに本社を置く宇宙輸送サービス企業である。同社は、世界最大の金属3Dプリンター「Stargate(スターゲート)」を自社開発し、ロケットの設計・製造プロセスを根本から再定義することを目指している。従来のロケット製造では数万個の部品と複雑なサプライチェーンが必要であったが、同社は部品点数を100分の1以下に削減し、原材料からわずか60日以内でロケットを完成させる垂直統合型の製造モデルを構築した。2023年3月には、世界初の3Dプリントロケット「Terran 1(テラン1)」の打ち上げを実施し、軌道投入には至らなかったものの、Max Q(最大動圧点)の通過やステージ分離に成功し、3Dプリント構造体が宇宙環境の過酷な負荷に耐えうることを証明した。現在は、完全再使用型の大型ロケット「Terran R(テランR)」の開発に全リソースを集中させている。
コア技術とプロダクト
同社の核心は、独自開発の大型金属3Dプリンティング技術「Stargate」にある。最新の第4世代Stargateは、水平方向に印刷を行うことで、従来の垂直型よりも高速かつ大規模な構造物の製造を可能にしている。この技術により、複雑なエンジン部品や機体構造を一体成形することが可能となり、接合部の削減による軽量化と信頼性の向上を実現した。主力製品となる「Terran R」は、全長約82メートル、直径約5.5メートルの完全再使用型2段式ロケットである。低軌道(LEO)への打ち上げ能力は、再使用時で23,500kg、使い捨て時で33,500kgを計画している。エンジンには、自社開発の「Aeon R(イオンR)」を第1段に13基、真空用の「Aeon Vac」を第2段に1基搭載する。これらのエンジンも主要部品の大部分が3Dプリンティングによって製造されており、推進剤には液化天然ガス(LNG)と液体酸素(LOX)の組み合わせを採用している。
資金調達と投資家
Relativity Spaceは、宇宙スタートアップの中でも最大規模の資金調達を実現している。2021年6月に実施されたシリーズEラウンドでは、Fidelity Management & Research Companyをリード投資家として6億5,000万ドルを調達した。このラウンドには、BlackRock、Baillie Gifford、Tiger Global、さらにはSocial CapitalのChamath Palihapitiya氏などが参加した。この資金調達により、同社の累計調達額は13億ドルを超え、当時の評価額は42億ドルに達した。調達した資金は、主に「Terran R」の開発加速と、ロングビーチの新本社「The Wormhole」における生産設備の拡充に充てられている。同社は、打ち上げ前から既に複数の商用衛星オペレーターと総額数十億ドル規模の打ち上げ契約を締結しており、市場からの高い期待を背景に強固な財務基盤を構築している。
競合環境
同社の直接的な競合は、SpaceX(スペースX)とRocket Lab(ロケット・ラボ)である。特にSpaceXの「Falcon 9」は中型・大型ロケット市場における圧倒的なリーダーであり、Relativity Spaceは「Terran R」によってこの市場への食い込みを図っている。また、Rocket Labが開発中の再使用型ロケット「Neutron(ニュートロン)」も、Terran Rと同様の中型・大型ペイロード市場をターゲットとしており、激しい開発競争が繰り広げられている。Relativity Spaceの優位性は、3Dプリンティングによる「ソフトウェア定義の製造(Software-defined manufacturing)」にある。設計変更を即座に製造プロセスに反映できる柔軟性は、従来の金型や専用工具を必要とする製造手法に対する強力な差別化要因となっている。
日本市場との関連
現時点でRelativity Spaceは日本国内に拠点を置いていないが、日本の衛星オペレーターにとって有力な打ち上げ選択肢の一つとなっている。日本の宇宙基本計画において、民間ロケットの活用による打ち上げ手段の多角化が掲げられる中、Terran Rのような大型・低コストな再使用型ロケットは、日本のコンステレーション(衛星群)構築を目指すスタートアップや研究機関にとって極めて重要である。また、同社の3Dプリンティング技術自体が、日本の製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化のベンチマークとなる可能性が高い。今後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との技術交流や、日本の商社を通じた国内顧客の獲得が進むことが期待される。
出典
- Relativity Space Official Website (https://www.relativityspace.com/)
- Relativity Space Press Release: "Relativity Space Shares Updated Go-to-Market Strategy for Terran R" (2023-04-12)
- SEC Filings and Public Funding Records via Crunchbase
掲載元:Relativity Space(Relativity Space 分析) · 参照リンク
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