スタートアップ
アストロスケール——軌道上サービスで宇宙の持続可能性を牽引する企業である。
該当する宇宙スキル標準
ポイント解説
- 1.軌道上のゴミを取り除き、宇宙の持続可能な利用を支える「宇宙の掃除屋」である。
- 2.2024年6月に東証グロース市場へ上場し、JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズ2において2027年度までの契約を締結している。
- 3.SSS No.08明記。製造業の品質管理から宇宙機の信頼性保証(Mission Assurance)への転換が典型的な経路である。
アストロスケールホールディングスの企業プロファイル。JAXAとの提携、ADRAS-J等のコア技術、2024年6月の東証上場、2027年に向けたデブリ除去実証計画など、宇宙の持続可能性を担う同社の事業戦略を詳細に解説。

企業概要
アストロスケールホールディングス(Astroscale Holdings Inc.)は、2013年に岡田光信氏によって設立された、軌道上サービス(On-Orbit Servicing)を専門とする宇宙スタートアップである。同社は「宇宙の持続可能性(スペース・サステナビリティ)」の確保をミッションに掲げ、増え続ける宇宙デブリ(宇宙ゴミ)の除去や、人工衛星の寿命延長、故障機の点検・移動といったサービスの開発を行っている。2024年6月5日、同社は東京証券取引所グロース市場への上場を果たした(証券コード:186A)。これにより、宇宙デブリ除去を専業とする企業として世界で初めての株式公開事例となった。本社を日本に置きつつ、英国、米国、イスラエル、フランスに拠点を構え、グローバルな事業展開を加速させている。また、各国政府や国際機関と連携し、宇宙空間における交通管理や持続可能な利用に関するルール形成にも深く関与している。
コア技術とプロダクト
同社のコア技術は、制御不能となった「非協力対象物」に対して安全に接近し、捕獲する「接近・近傍運用(RPO:Rendezvous and Proximity Operations)」である。主要なプロダクトとして、デブリ除去実証機「ELSA-d(End-of-Life Services by Astroscale - demonstration)」が挙げられる。ELSA-dは2021年に打ち上げられ、磁石を用いた模擬デブリの捕獲実証に成功した。さらに、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の「商業デブリ除去実証(CRD2)」フェーズ1において、大型デブリ(H-IIAロケット上段)の調査を目的とした「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」を開発した。ADRAS-Jは2024年2月に打ち上げられ、対象物から数十メートル以内への接近と定点観測に成功している。また、複数の故障衛星を連続して除去する「ELSA-M(Multi-client)」や、静止軌道(GEO)における衛星寿命延長サービス「LEX(Life Extension)」の開発も進めている。これらの技術により、宇宙資産の保護と軌道環境の改善を同時に実現することを目指している。
資金調達と投資家
同社は上場前までに累計で約383,000,000 USD(約600億円)を超える資金を調達した。主な投資家には、産業革新機構(現INCJ)、三菱商事、ジャフコ、SBIインベストメントなどの国内有力機関のほか、海外の機関投資家も名を連ねている。2024年6月の上場時には、公募価格ベースでの時価総額は約1,100,000,000 USDに達した。2024年4月期の通期決算によると、売上高は約11,600,000 USD(17億9,000万円)を記録した一方、研究開発費の先行投資により約59,800,000 USD(92億円)の営業損失を計上している。つまり、現在は技術確立と市場創出のための投資フェーズにある。さらに、JAXAや英国宇宙庁(UKSA)からの公的契約が収益の柱となっており、官民連携によるビジネスモデルを構築している。
競合環境
軌道上サービス市場における直接的な競合としては、スイスのクリアスペース(ClearSpace)が挙げられる。クリアスペースは欧州宇宙機関(ESA)と連携し、2026年以降にデブリ除去実証を計画している。一方、衛星寿命延長の分野では、米国のノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)傘下のスペース・ロジスティクス(SpaceLogistics)が先行しており、既に「MEV(Mission Extension Vehicle)」による商用サービスを提供している。アストロスケールの強みは、低軌道(LEO)から静止軌道(GEO)までをカバーする幅広い製品ラインナップと、日本・欧州・米国の各政府から受注を獲得している実績にある。また、デブリ除去に関する国際的な標準化活動を主導することで、市場のリーダーシップを確保している。
日本市場との関連
日本市場において、同社はJAXAの「商業デブリ除去実証(CRD2)」のパートナーとして不可欠な存在である。2024年4月には、フェーズ2(実際のデブリ捕獲・除去を行う工程)の契約をJAXAと締結した。このプロジェクトでは、2027年度までにロケット上段の捕獲と大気圏再突入による除去を目指している。また、三菱電機などの国内大手宇宙メーカーとのサプライチェーン構築も進めている。さらに、日本政府が推進する「宇宙安全保障」の観点からも、軌道上の状況把握(SSA)能力を提供する同社の技術は重要視されている。つまり、同社の成長は日本の宇宙産業全体の技術底上げと、国際的なプレゼンス向上に直結しているのである。
出典
- アストロスケールホールディングス株式会社 投資家情報(https://astroscale.com/ja/investors/)
- JAXA プレスリリース「商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズ2の契約締結について」(https://www.jaxa.jp/press/2024/04/20240416-1_j.html)
- 東京証券取引所 新規上場会社情報(https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/index.html)
掲載元:Astroscale(Astroscale 分析) · 参照リンク
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